ワキガ手術は保険適用できる!条件と値段は?
- 2023/04/25
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保険診療は3割負担、自由診療は10割負担。保険診療と自由診療の大きな違いは、患者が支払う治療費にあります。
本人の年齢や所得の状況によって変動しますが、一般に国が認めた治療を国が指定した病院(保険医療指定機関)で受けるのであれば、最低でも費用の7割の扶助を受けられます。
これが、健康保険のおおまかな仕組みで、保険診療の最大のメリットです。
ワキガの治療でも保険診療扱いになるものと、自由診療扱いになるものがあります。手術は保険が適用されるという認識が広まっていますが、手術であればなんでも無条件に適用されるわけではありません。
この記事ではワキガ手術の基本的な知識、保険適用の条件、メリットとデメリットを、自由診療の治療法との比較を交えつつ解説します。
執筆者 綾部 誠
あやべクリニック院長。日本美容外科学会認定美容外科専門医。東京医科大学医学部を卒業後、久留米大学病院の形成外科医師として勤務。1997年にあやべクリニック開院。美容外科医として30年以上にわたり勤務した経験を活かし、情報発信を行っている。
[目次]
- 保険適用できるワキガ手術とは?
- 保険適用した場合のワキガ手術の費用
- 保険適用できる剪除法(皮弁法)によるワキガ手術の流れ
- 保険適用できる剪除法(皮弁法)によるワキガ手術のメリットとデメリット
- 自由診療の治療法
- ワキガ手術の治療法に悩んだら専門医に相談しよう
保険適用できるワキガ手術とは?
ワキガの治療法で保険適用できるのは、剪除法※1と呼ばれる手術だけです。剪除法は数あるワキガ治療の中でもっとも確実性が高く、重いワキガ症状にも効果が認められているため、標準的な治療法として広く浸透しています。
現代ではレーザーや注射、専門の治療機器などのメスを使わない新しい治療法が数多くありますが、治療効果の高さという点だけに着目すれば剪除法を超えるものは生み出されていないのが実情です。
ただ、剪除法では治療効果の高さの代償として厳しい行動制限と相応のリスクを背負わなければなりません。
テニスボールほどの大きさに丸めたガーゼで施術部位を圧迫固定するタイオーバー※2を1週間ほど施すことが必須であり、そのあいだ肩肘を動かすことは許されません。抜糸までの2週間程度は入浴もままならず、激しい運動も1カ月は控えることになります。
また、メスで切開する以上は必ず傷跡が残りますし、血腫などの合併症のリスクが排除できないことも覚悟しておく必要があります。
※1 剪除法(皮弁法)
出典元:日本医科大学 武蔵小杉病院 形成外科 – ワキガ(腋臭症)の治療~ニオイの診断と手術
※2 タイオーバー
出典元:simple and rapid method of repeated tie over dressing
保険適用できる条件
剪除法を保険適用で受けるためには医師の診断が必要です。診断の目安は悪臭が著しく他人の就業に支障を生じる事実が明確で、客観的に見て医療に委ねる必要がある場合とされています。そのため、症状がごく軽微なケースでは保険適用とはなりません。
ただ、治療が必要なワキガ症状かどうかの判定は医師に委ねられています。そのため、適用のラインに多少の差があるのも事実です。おおよそ鼻を接近させなくても臭いがわかるレベルと考えて良いでしょう。
年齢制限はありませんので医師の診断があれば、何歳からでも施術を受けることができます。しかしながら、メスで皮膚を切る剪除法は精神的にも身体的にも負担が大きく、成熟した大人にとっても厳しい治療です。そのため症状が軽い方や、お子様が受けるのには、両手で賛同できないのが本音です。
再手術にも保険適用はできる?
手術を受けたものの効果に納得できないときや、傷跡が思ったよりも目立つなどの理由で、再手術を受ける場合があります。再手術の場合、保険適用は極めて難しいと言わざるを得ません。ほとんどの医療機関で再手術は自由診療扱いとなるでしょう。
それには初回の手術で臭いがゼロになっていなくても多少なりとも症状が改善されていることや、手術跡をきれいにしたいといった美容的な側面が強い場合に、保険適用の要件を満たすことが難しいという背景があります。
また、一度手術してしまうと皮膚の内側が瘢痕化(はんこんか)※3してしまい、臭いの原因となるアポクリン※4腺の除去が難しくなりますので、初回ほどの治療効果が望めないことも理由に挙げられます。
※3 一度手術してしまうと皮膚の内側が瘢痕化(はんこんか)
出典元:Surgical Scar Tissue: a Less Talked-about Side Effect
※4 アポクリン腺
出典元:National Library of Medicine Histology, Apocrine Gland
保険適用した場合のワキガ手術の費用
剪除法の費用を保険適用で支払う場合の相場はおおよそ5万円程度です。ただし、同じ治療法であっても医療機関ごとに手順や設備が異なるため費用は変動します。あくまで一例として参考にしてください。
片ワキずつの手術も可能
多くの医療機関では同時に両ワキを施術する方法を採用していますが、なかには片ワキずつ治療できる医療機関もあります。
メリットとして、以下の点が挙げられます。
・両ワキ同時の施術より手術に時間をかけられるので、丁寧な処置が可能になる
・片腕は使える状態で術後生活を送れるので制限が軽減され、患部の安静が保てる
とはいえ、両ワキをそれぞれに治療するとなれば、それだけ長い期間の行動制限に耐えなければなりません。
手術以外に必要な費用とは?
剪除法を受けるのに必要な費用は手術代だけではありません。
術前・術後の通院では、その都度診察代や薬代などの費用がかかります。
術前のカウンセリング、術後の抜糸や経過観察などの通院は全部で3〜5回程度が一般的です。1回あたりの費用は、処方される薬の種類などによって変動しますが、おおよそ1,000円〜2,000円程度。
また、術前に手術の適性を確かめるための血液検査を実施するケースがあり、そのための費用は平均して3,000円〜5,000円程度です。
ワキガ手術に生命保険は適用できるの?
ワキガ手術が適用の対象となるかどうかは、加入している保険の種類によって異なります。ただ、一般的に生命保険は命に関わる治療に対する保険ですので適用外であることが多いようです。
一方で医療保険は公的医療保険制度に連動した適用が近年の主流なので、対象となる可能性は十分にあります。入院給付金か手術給付金かで給付の条件が変わりますので、事前に保険会社に確認しておきましょう。
保険適用できる剪除法(皮弁法)によるワキガ手術の流れ

近年の剪除法は日帰り手術が主流です。ただ、手術は1日で済んだとしても治療が1日で終わるわけではありません。
術後には圧迫固定の期間があり、切開の部位がきちんとくっつくまでには抜糸から少なくとも2週間はかかります。傷跡が目立たなくなるまでのケアを含めると年単位の治療になることも珍しくないので、相応の覚悟が求められます。
手術の流れ①問診
医師によるカウンセリングを行い、ワキガ症状が治療を必要とするものかどうか診断します。
診断方法は医師ごとに異なりますが、ガーゼを使ったテストなどが一般的です。医師から患者へ手術についての詳しい説明がなされ、同意が確認できれば手術の日程を決めます。
医療機関によっては血液検査が実施されます。その場合には結果が出るまで2〜3日ほど待機の後、手術への適性が確認され次第、手術の日程を組むことになります。
手術の流れ②手術
ワキの下に注射で局部麻酔を施し、メスで4〜5cmほど切開します。皮下組織を剥離し、皮膚を反転させて医師が目で確認しながらワキガ症状の原因となるアポクリン腺を取り除きます。摘出後に切開部を縫合してタイオーバー(ガーゼを用いた圧迫固定)を施して手術は終わります。
前もって局部麻酔をかけるため、術中の痛みはさほど心配ありません。しかし、そのためには無防備なワキに注射の針を刺す必要があります。また、施術時間はおおよそ60〜120分程度で、その間は覚醒した状態で手術を受けることになるため、注射の痛みと術中の恐怖からは免れられないのが剪除法の難点です。
手術の流れ③術後

経過が順調であれば、術後のスケジュールは
- 2〜3日目:経過観察、ガーゼ交換
- 7日目:経過観察、タイオーバーの解除
- 14日目:切開部の抜糸
- 1カ月後:経過観察
といった頻度で通院することになります。
手術翌日からワキを濡らさない範囲でシャワーを浴びることはできますが、腕を上げる動きも制限されるため、洗髪を自ら行うことと、湯船への入浴はできません。タイオーバーが外れた後には全身にシャワーを浴びられるようになります。術後7〜14日、抜糸が済めば入浴も可能です。
また、特に注意したいのは抜糸から2週間です。「抜糸をしたから大丈夫」と気が緩んでしまったばかりに、切開部が解離してしまい、取り返しのつかない傷を残してしまう結果になることが跡を絶たないからです。
たとえ抜糸をしても力が加われば傷口は開いてしまうので、抜糸から2週間、切開部位が生着するまでは、できる限りの安静を保つことがとても大切です。
保険適用できる剪除法(皮弁法)によるワキガ手術のメリットとデメリット
剪除法の主なメリットとデメリットを以下にまとめました。検討にお役立てください。
剪除法(皮弁法)によるワキガ手術のメリット
治療の確実性が高く、再発の可能性が低い
医師の目視下で着実にワキガ症状の原因であるアポクリン腺を取り除いていくため、確実性が高く重いワキガ症状にも一定の改善が見込めます。基本的に症状が再発することも考えられません。もし再発したと感じるケースがあるとすれば施術時のアポクリン腺の取り残しによるものでしょう。
ただ、治療効果を優先して大きく切開すれば、それだけ大きな傷が残り合併症のリスクが高まりますし、治療後の見た目を優先して短く切開をすればワキの端の部分のアポクリン腺除去は困難になります。この点が剪除法の悩ましい点です。
また、いかに剪除法といえども臭いを全くのゼロにすることは難しいことは覚えておきましょう。
他の治療法と比べて費用を抑えられる
剪除法は保険が適用される唯一のワキガ治療ですので、他の治療と比べると価格を抑えられるメリットがあります。自由診療が全額負担なのに対して、70歳未満の方であれば3割負担で治療を受けることができます。
生活保護受給者やひとり親家庭への扶助も、ワキガ症状が保険適用の要件を満たすと医師に判断されれば、ほかの病気にかかったときと同様に受けることができます。
剪除法(皮弁法)によるワキガ手術のデメリット
傷跡が残る
剪除法ではワキをメスで切開するため、どうしても傷跡が残ってしまうことが大きなデメリットです。術後の1週間程度は痛みがあり、傷跡は赤く目立つ状態が続きます。3カ月程度で次第に改善されて目立たなくなってはいきますが消えない傷が残ると考えておくべきです。
手術後に安静にする必要がある
ワキのくぼんだ部分の皮膚は浮いてしまいやすいため、術後にはタイオーバー(ガーゼを用いた圧迫固定)を施したうえで2週間程度の徹底的な安静が求められます。その間は腕を上げる動きは制限され、入浴もできません。
皮膚の速やかな生着は、この期間にどれだけ安静を保てるかにかかっています。再出血や創部のズレから起こる合併症を避け、傷跡を目立たないものにするためには細心の注意を払う必要があります。職場や学校で、周囲に知らせたくない場合には休暇を取っておく必要があるでしょう。
ほんの少しの気の緩みで血腫や切開部の離開を起こしてしまい、皮膚の壊死などの重大な事態を招くことがよくあります。術後の生活制限は非常にシビアであることを覚えておきましょう。
自由診療の治療法
よほど重いワキガ症状でない限りは剪除法のリスクを取らなくとも、改善できる望みは大いにあります。一定の費用はかかりますが、自由診療の治療で傷跡が残らないものを選ぶのもひとつの手です。
自由診療の主な治療法は以下の通りです。比較表を設けましたので検討にお役立てください。
剪除法 | ボトックス | ミラドライ | ビューホット | |
保険適用 | ◯ | × | × | × |
費用相場 | 5万円〜 | 2万円〜 | 20万円〜 | 30万円〜 |
施術時間 | 60〜120分 | 10〜15分 | 60〜120分 | 40〜60分 |
効果持続 | 半永久 | 3〜6カ月 | 半永久 | 半永久 |
傷跡 | 残る | 残らない | 残らない | 残らない |
術後の制限 | 2〜4週間安静 | なし | 1日 | 1日 |
ボトックス注射
ワキに注射針を刺し、ボトックス(Aボツリヌス菌毒素製剤)を注入する方法です。
汗を分泌させる信号を阻害して、発汗量を減らすことでワキガ症状の軽減に繋げます。費用の相場が2万円程度と比較的安価であり、10分ほどの短時間で傷跡を残さずに治療できる手軽さがメリット。
ただし効果は4〜6カ月と限定的であり、あくまで制汗を目的としているため、ワキガ症状の根本治療とはならないことがデメリット。
軽度のワキガ症状の方、ワキの汗を減らしたい方に向いた治療法です。
ミラドライ
多汗症治療の認可を受けているミラドライという機器をワキガ治療に転用した施術方法です。
電子レンジの原理であるマイクロ波をワキに照射して、原因となる汗腺を破壊します。多汗症の症状改善が望めるほか、切開が不要なので当日からシャワーを浴びられることや、永続的な臭いの軽減効果が期待できる点がメリットです。
一方、デメリットは、元は多汗症の治療機器であり、表皮からまんべんなく照射するタイプの施術なのでアポクリン腺を狙って破壊することができないこと、1回の施術で臭いをゼロにするのは難しいといった点です。中〜重度のワキガ症状に向いた治療法です。
ビューホット

ビューホットは極細の針先に高周波を流してアポクリン腺を破壊するワキガ専用の治療機器です。
照射レベルや深さでアポクリン腺だけを狙った施術が可能。切開が不要で周りの組織へのダメージが少なく、治療の跡がほとんど残りません。術後の生活制限がなく、当日からシャワーが浴びられますし、永続的な症状改善が見込める点がメリットです。
重度のワキガ症状では1回の施術で臭いをゼロにするのは難しく、施術者の熟練度によって治療効果に差が出てしまうという点がデメリット。中〜重度のワキガ症状に向いた治療法です。
ワキガ手術の治療法に悩んだら専門医に相談しよう
現在のワキガの治療法に万能はありません。どのような方法にも一長一短があるため、それぞれの治療法の長所と短所を理解したうえで何を優先すべきかを選択することが大切です。
とはいえ、自分の症状に対して客観的に判断するのはとても難しいこともまた事実。そんなときにこそ経験豊かなワキガの専門医を頼ってください。
私のクリニックの話をするならば、通算2,500例を超える国内最大級の治療実績をビューホットを用いた治療で築いており、その全てのカウンセリングと施術を院長である私自身が行っています。子どもから大人の方まで、多くの方にご満足いただいています。
ワキガの治療では何よりも医師の経験が重要です。長年にわたってワキガ症状と向き合ってきた実績こそ、あなたに合った治療法を探すための手助けとなるものと、私は信じています。
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