福岡美容皮膚科 あやべクリニックあやべクリニック公式

AYABE CLINIC / DOCTOR PROFILE

綾部 誠 院長
— 35 年の手のなかに刻まれたもの

あやべクリニック院長 綾部誠

はじめに

私の父は理容師でした。
母は美容師、弟も美容師です。

私の家には、人の顔と髪を毎日整える仕事の風景がありました。
お客さんが来て、目を閉じて、整えられて、鏡を見て、満足して帰る。
それが、私にとっては当たり前の生活でした。

医学の主軸は、癌です。
これは、紛れもない事実です。

けれど私には、癌には興味が持てませんでした。
癌は、摘出するものだったからです。

私が選びたかったのは、整えること、創造することでした。
家業から自然に受け取ったその姿勢が、私の中にあったのだと思います。
だから私は、形成外科を志しました。

1989 年、平成元年に東京医科大学を卒業し、久留米大学形成外科に入局しました。
それから 35 年、私はこの道を歩いてきました。

1996 年、私は福岡で自分のクリニックを開きました。
その決断に至るいくつかの経緯はありますが、根にあったのは、家業から受け取った「整える」「創造する」という姿勢でした。

このページは、その 35 年の「手」のなかに、何が刻まれてきたかの話です。
急ぎません。読まれる方のペースで、お読みください。

第 2 章 手のなかに刻まれたもの

1989 年、久留米大学形成外科に入局した際、教授からこう言われました。

「外科医たるもの、患者さんの身体にメスを入れるということは、全身管理ができなければならない。だから大学の麻酔科に行って麻酔を勉強して、全身管理を勉強してこい。それから形成外科の勉強を開始しても全く遅くはない。」

こうして私は、形成外科の勉強を始める前に、大学の麻酔科で 6 ヶ月の研修を受けることになりました。

そこで身体に刻まれたのが、ABC と呼ばれる、医師としての基本中の基本です。
A:気道。B:呼吸。C:循環。
患者さんの命を守るために、医師が真っ先に学び、実践できるようにしなければならない 3 つの土台です。

このうちの A、気道の確保が、医師として最も重要です。
言い換えれば、患者さんの呼吸が止まった時、自分の手で気道を確保できるかどうか。
これができないと、急変した患者さんは 10 分も持ちません。

美容医療の施術中、麻酔で意識のない患者さんに、万が一のことが生じた際、
その時、自分の手で気道を確保し、呼吸と循環を守れる医師なのか。
私は、その問いに「できます」と答えられる医師でありたいと、ずっと考えてきました。
35 年前に身体に刻まれた ABC は、今も、そのために手のなかにあります。

たった 6 ヶ月でしたから、心臓外科の麻酔のような高度な領域は学べませんでした。
それでも、医師として一人で当直をしても、目の前の患者さんを守れる。その基礎が、ここで身体に刻まれました。

大学病院での麻酔科では、新生児の手術を担当する機会も多くありました。
生後 7 日ほどの赤ちゃんが、鼠径ヘルニアや腸重積で運ばれてきます。
手術時間は 20 分から 30 分。
そんな小さな身体には、挿管は出来ません。マスク麻酔だけで、全身麻酔をかけます。

これがなかなか、思いのほか難しいのです。
何が難しいかというと、新生児の肺に最適な量の空気を送り込むのを、手の感覚だけで行わなければならないからです。
強すぎれば肺が傷つく。さらに強ければ、空気が胃や腸に入ってしまう。そうなると、小児外科の先生の手術を妨げてしまいます。

ここで、マスク麻酔の術を学んだと自負しています。

麻酔科の研修を終えた後、私は形成外科に戻りました。
大学の形成外科で扱う症例の多くは、ここで詳しくお話しすべき性質のものではありません。
重さのある現場でした。あえて具体は控えますが、その現場で過ごした年月が、後に私の手と目を作ったことだけは確かです。

そしてもうひとつ、当時の久留米大学にはレーザー治療外来がありました。
大学の皮膚科と言えどもまだレーザーが導入されていなかった時代に、形成外科でレーザー治療を担っていたのです。
私はそこで Spectrum社のRD-1200 というQスイッチルビーレーザーを扱っていました。

そこで何が大変だったか。
レーザーは、2 枚の鏡を向き合わせて光を増幅する仕組みです。
その当時のレーザー治療機は今では信じられないほどお粗末な代物でした。
夏場、部屋の湿度が高いと、レーザー治療機の中の鏡に結露が生じてしまい、
レーザーが立ち上がりません。
レーザー外来の日は、私は早めに出勤しました。
そうして外来の部屋の温度と湿度をコントロールし、それからレーザーを立ち上げる。
そういう時代でした。

機器の中身を、自分の身体で知る。
35 年前のレーザー治療外来から、私はそうしてきました。
今も、同じです。

第 3 章 計測器に映らないもの

外科の医師にとって、最も気を付けなければならない患者さんがいます。
喘息発作の方です。

なぜか。
喘息の方は、何が原因で発作が生じるか、予断を許さないからです。
そして発作が起きた時、迅速に対応しないと、あっという間に喘鳴(ぜんめい)を起こして気道を閉塞させてしまう。
重篤な状態になってしまうのです。

ですから、喘息の患者さんがいたら、麻酔科医に必ず報告しなければなりません。
これを怠ったら、アウトです。

でも、正直なところ。
麻酔科で勉強していて、喘息持ちではないのに「何となく喘鳴が生じる感じがするな」と感じることがあります。
そう感じた時には、先回りして対策を打っておく。

その対策を、先回りして打てるか、打てないか。
それが、医師としての経験値だと、私は思います。

水泳の本を読んだからといって、泳げるようになるわけではない。
それと同じことです。

医師としての経験値とは、教科書には書かれていないものを察知する目と手のことです。
そして、何かが起きてから対応するのではなく、何も起きないように先回りする仕事のことです。
何も起きなかった、という結果でしか観測されない仕事を、35 年積み重ねてきました。

第 4 章 痛みの因数分解

私は開業してしばらくの間、ビューホットの施術には、局所麻酔を使っていました。

注射の痛み、と一言で言いますが、
これを因数分解すると、3 つになります。

1 つ目は、針の太さ。
細い方が痛くないし、太い方が痛い。当然のことです。
ただし、これは皮膚を貫く一瞬のことで、痛み全体の 20% ほどでしょうか。

2 つ目は、薬液を注入するスピード。
ゆっくり入れていけば痛くないですが、力を込めて「ぐっと」入れたら、その圧力で痛い。
これは、痛み全体の 10% くらいかなと思います。

ここまで足して、30%。

残りの 70% は、薬液そのものです。

「液体が痛い」とはどういうことか。

シャンプーや石鹸が目に入ったら、痛いですよね。
誰しも経験したことのある、あの痛みです。
液体が痛いというのは、それと全く同じこと。液体の pH と、浸透圧の問題です。

体の組成と同じ pH と同じ浸透圧の液体にすれば、実は痛くないのです。
そのために私は、麻酔薬にメイロン(=重曹のお薬です)を混ぜて使っていました。
メイロン入りの局所麻酔液は、注射しても、ほとんど痛くありません。

痛みの一つ一つを、こうして潰しに行ったのです。

第 5 章 歯科女医の涙

そんなある日のことです。
30 代の歯科の女医さんが、ビューホットの施術で来られました。

メイロン入りの局所麻酔ですから、痛くないはずです。
ところが、その女医さんが、顔を真っ赤にしながら、大粒の涙をぽろぽろこぼし始めたのです。

私はびっくりして、聞きました。
「痛いですか?」

彼女の答えは、こうでした。

「いいえ、痛くありません。怖いんです。」

もう 7 年ほど前のことです。

この時、私が向き合ったのは、もう「歯科の女医さん」ではありませんでした。
泣いている子供のような、ひとりの 30 代の女性でした。
本当の子供ではない、現役の歯科医ですから、私の事情も察してくださったと思います。
お話をして、気持ちを落ち着けることしか、私にはできませんでした。

この出来事は、私にとって大きな勉強になりました。

患者さんは、頭ではすべて理解されているのです。
自分が今どういう状態で、何をしなくてはいけなくて、何を我慢しなくてはいけないかを。
それでも、怖いものは怖いのです。怖くて涙が止まらない。

つまり、頭と心は別なのです。

そして、もうひとつ。
日頃、患者さんを自分で診療している側の人間、つまり医師であっても。
いざ自分が患者となったら、肩書きはすべて剥がれ落ちて、ひとりの 30 代の女性に戻ってしまう。

施術台の上で、人は誰でも、丸裸の人間に戻る。

このことが、私の医療観を、ひとつ深いところで作り直しました。

第 6 章 マスク麻酔という解

歯科の女医さんが涙をこぼした、あの日。
私は冷静になって、考え直しました。

そもそも、ビューホットを局所麻酔で行うこと自体が、危険なことだったのではないか、と。

なぜか。
脇の下は、柔らかくナイーブな場所です。
鍛えることもできない、踏ん張ることもできない、そういう部位です。
そして、すぐ下には、太い神経や血管が走っています。
何より、患者さんが急激に身体を動かしてしまうと、肺に穴をあけてしまう可能性すらある。
もしそんなことになれば、重大な医療過誤になってしまいます。

だからこそ、子供のワキガ手術は、局所麻酔ではできないと私は気づきました。
小さなお子さんは、頭で理解しろと言っても無理です。
そして、頭で理解できる大人ですら、歯科の女医さんのように、心では怖いのです。

頭と心は、別。
それなら、寝てもらう以外に、安心安全な道はない。

そう考えた時、自分の手のなかに、答えがあることに気づきました。
そうだ! マスク麻酔だ!!

私は当時、すでに挿管を伴う全身麻酔下で、脂肪吸引や豊胸手術を日常的に行っていました。
挿管する全身麻酔は、麻酔の中でも重い領域です。
それを毎日扱っている自分にとって、マスク麻酔は、挿管する全身麻酔より浅くまたより安全な選択肢でした。

そしてもうひとつ。
30 年前、久留米大学の麻酔科で、新生児の鼠径ヘルニアの手術にマスク麻酔だけで全身麻酔をかけていた、あの経験。
手のなかに、既にマスク麻酔の感覚が刻まれていたのです。

私は、歯科の女医さんの一件の直後に、マスク麻酔を導入しました。


それから現在まで、当院では、子供さん以外でも全ての症例のワキガの施術には、マスク麻酔を採用しています。

マスク麻酔は、おおむね 90 秒ほどで意識を喪失し、入眠していきます。
これは、子供も大人も、同じです。

子供さんの場合、まずは親御さんに付き添っていただきます。
親御さんが子供さんの左側にいる状態で、マスク麻酔を導入し、お子さんが眠るまでの 90 秒間、ずっと一緒にいてもらう。
お子さんは、親御さんに見守られながら、安心して眠りにつきます。

そうして、お子さんが眠られた後、親御さんと当院の看護師の二人で、どこが一番匂うかを実際に嗅いで確認し、マーキングします。
お母様、お父様にも、施術に参加していただくのです。

そして、ワキガが遺伝することについて。
親御さんの心の奥には、おそらく、自責の念があると思います。
自分たち親の遺伝で、子供にこのようなことを強いることになってしまった、ということをです。だから、自分の子供が、少しでも心穏やかに施術に臨んでくれればと、願っておられるはずです。

そのお気持ちを、私は静かに受け止めています。

マーキングを終えた後、親御さんに退室していただきます。
それから麻酔の深度を深くしていって、ビューホットの施術ができる状態になるまで 10 分。
施術そのものは、20 分から 25 分で終わります。

施術が終わって、お子さんが目を覚まされる前に、また親御さんに入室していただきます。
お子さんが目を覚ました時、寝てしまった時と同じ位置に、親御さんがいる。
だから、お子さんも安心できるのです。

ですから、たまに、「まだ始まっていないと思った」と語るお子さんもいらっしゃるほどです (笑)。

第 7 章 腋臭治療の医療倫理

― 30 年の診療経験から

私は 30 年の診療経験を通じて、「腋臭治療とは QOL を挙げる施術である」と考えるようになりました。

ニオイは「敏感であると同時に鈍感」

ご自分のニオイには、構造的に気付けない方が大半です。これは医学的には嗅覚順応(olfactory adaptation)と呼ばれる、人間の嗅覚の本来の仕組みです。

  • 自分が使ったトイレのニオイは感じませんが、他人が使ったトイレのニオイは感じます
  • 友人のお宅にお邪魔したとき、最初の数分は「このお宅のニオイ」を感じますが、2 時間ほど過ごすと自分もそのニオイに慣れて感じなくなります

ご自分のニオイは常にご自身の身体の周辺にあるため、嗅覚が「日常の背景」として処理してしまい、ご自分では構造的に気付けないのです。ですから、ニオイをご指摘された方は、「自分はなぜこれまで気付けなかったのか」とご自身を責める必要はありません。それは人間の嗅覚の自然な仕組みであり、個人の問題ではありません。

お子さまが気付かれるきっかけ(年齢による違い)

診療現場の経験では、お子さまがご自分のニオイに気付かれるきっかけは、ほとんどの場合クラスメイトなど他者を経由しています:

  • 小学生:クラスメイトから直接告げられて気付かれることが多いです(人格形成途中で不意を突かれるご経験)
  • 中学生:更衣室のロッカーなどで偶然陰口を聞いてしまうことが多いです(中学生になると「直接本人には言わない」社会的モラルが形成されるため、加害の形態が陰口に変化します)

お子さまの孤独な戦い

学校・部活・体育で気にされるお子さまの中には、親御さまや先生にも気付かれないまま、ご自身で苦悩を抱え、ご自身で対処の方法を長い時間をかけて考えてこられた方々がいらっしゃいます。クラスメイトの体験を観察してご自分の未来を予測し、不登校を経て、ご決断に至るまでに 1 年以上の時間をかけられたお子さまもいらっしゃいました。

そのご決断の背景には、「好きな友人と一緒にいたい」「学校に通い続けたい」という、その方の生活と未来を守ろうとするお気持ちがあります。これは「ニオイを治す」という枠を超えた、生活の質(QOL)を取り戻すご決断です。

当院は、そうしたお気持ちを伺う場として、診察室をご用意しています。お子さまが一人で戦ってこられたことを、初めて言葉にしていただける場として。

― 綾部 誠 医師

第 8 章 おわりに

私が研修医だった頃、私は外科医でも何でもしました。

市民病院にいたころ、整形外科の退官した教授と一緒に、骨折の手術にも入りました。
放射線科の先生と、胸部レントゲンの読影会にも参加しました。
そこで「胸のレントゲンって、こんな風に読むのか」と、研修医ながら勉強させていただきました。

研修医の頃と今とでは、医師のあり方が変わりました。

それでも私は、麻酔も、施術も、術後の経過観察も、自分の手と目で行います。
それは、35 年前に教えていただいた「全身管理ができてから、外科医になれ」という言葉を、私が今でも守り続けているからです。


余談ですが、日本形成外科学会には、綾部という姓が 2 人存在します。
私の家族にも形成外科医がいて、私の母校で診療を続けています。
父母から弟へ、私から次の世代へ。
「整える」「創造する」という姿勢は、形を変えながら、続いていくのかもしれません。


このページを最後まで読んでくださった、あなたへ。

ワキガに悩む方の多くが、長いあいだ、おひとりで抱えてこられたかもしれません。
家族にも、友人にも、相談しにくい。
自分だけがおかしいのではないか、と感じてこられた方もいらっしゃるかもしれません。

そう感じてこられた方に、私からお伝えしたいことが、ひとつあります。

私は 35 年、たくさんの患者さんとお会いしてきました。
そのなかで、何度も繰り返し見てきた風景があります。
それは、施術台の上で、肩書きがすべて剥がれ落ちた、ひとりの人間の姿です。

歯科の女医さんも。30 代の女性も。
子供さんも。お父様、お母様も。
医療従事者も。会社の社長さんも。
どんな立場の方でも、施術台の上では、ただ静かに、誰かの手に身を任せ、ひとりの人間に戻れます。

その瞬間に、私はずっと、立ち会ってきました。

ですから、もし、あなたがここまで読んでくださったのであれば、
そして、施術を受けてみようかと、心が少しでも動かれたのであれば、

こちら側で、お待ちしています。

急ぎません。
あなたのペースで、お越しください。


医療法人誠奈会 福岡美容皮膚科 あやべクリニック
院長 綾部 誠

これらの臨床経験は、以下の所属・認定を基盤にしています。

医師の経歴・所属学会・認定について

経歴

1983 年 4 月
東京医科大学 入学
1989 年 3 月
東京医科大学 卒業
1989 年 5 月
久留米大学形成外科 入局
1994 年 3 月
久留米大学形成外科 退局
1994 年 4 月
大手美容外科クリニック 入社
1997 年 3 月
大手美容外科クリニック 退社
1997 年 5 月
あやべクリニック(旧 福岡三井中央クリニック)開業
2020 年 9 月
福岡美容皮膚科 あやべクリニック 院長 就任(現職)

所属学会・研究会(全 22 件)

ワキガ・多汗症に関連する所属:

  • 日本発汗学会
  • 日本皮膚科学会
  • 日本形成外科学会
  • 日本美容外科学会(JSAS)
  • 日本美容外科学会(JSAPS)
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本レーザー医学会
  • アメリカレーザー医学会(ASLMS)Fellow

その他の所属:

  • 美容・アンチエイジング医療学会(IMCAS:International Master Course on Aging Science)
  • 日本レーザー治療医学会
  • 日本創傷治癒学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本褥瘡学会
  • 見た目のアンチエイジング研究会
  • 加齢画像研究会
  • 毛髪科学研究会
  • 瘢痕・ケロイド研究会
  • 日本 Men's Health 医学会
  • 日本更年期と加齢のヘルスケア学会
  • 日本肥満症治療学会
  • 国際個別化医療学会
  • 日本痤瘡研究会

役職

2012 年 - 2018 年
東京医科大学 評議員(退任済)
2020 年 - 2022 年
東京医科大学同窓会 理事(退任済)

資格・認定

  • 美容外科専門医(一般社団法人 日本美容外科学会 JSAS、第一一一七号、認定期間 2023 年 8 月 1 日 〜 2028 年 7 月 31 日)
  • ASLMS FELLOW(The American Society for Laser Medicine & Surgery, Inc.、Member Since 2016 年 12 月 2 日)
  • 日本美容外科医師会(JACS:Japanese Association of Cosmetic Surgeons)会員(特定非営利活動法人、2007 年 11 月 8 日 〜)