ワキガはどんな匂い? 特徴と自分で気づかない理由


私って、もしかしてワキガなの?ーーそう思ったとしても、誰かに聞くわけにもいかず、自分でも判断がつかない。ワキガの臭いには体質が深く関わりますので個人差があります。実はワキガかどうか判断がつきにくいケースはよくあることなのです。

とはいえ不安に思う必要はありません。ワキガは臭いの発生メカニズムが解明されている症状ですので、きちんとした知識があれば判別しやすくなりますし、正しく対処をすれば必ず臭いは軽減できます。

この記事では、ワキガの臭いの特徴、原因について解説するだけでなく、ご自身で判断するためのセルフチェック、臭いを抑えるためのセルフケアについて専門医の視点から解説します。

[目次]

  1. どんな臭いがしたらワキガなの?
  2. ワキガの匂いに本人が気づかないのはなぜ?
  3. 自分のワキガはどんな匂い? ティッシュを使ったセルフチェック
  4. ワキガは自分で治せる?臭いを軽減させる対策
  5. ワキガかどうかは匂いだけで判断できない
  6. 臭いが気になったら病院での治療がおすすめ

執筆者 綾部 誠
福岡美容皮膚科あやべクリニック院長。日本美容外科学会認定美容外科専門医。東京医科大学医学部を卒業後、久留米大学病院の形成外科医師として勤務。1997年に福岡美容皮膚科あやべクリニック開院。美容外科医として30年以上にわたり勤務した経験を活かし、情報発信を行っている。

どんな臭いがしたらワキガなの?

ワキガには典型的な臭いのパターンがあります。
その特徴を捉えることで、自己診断の精度はグッと上昇しますのでポイントを押さえておきましょう。

ワキガの臭いの特徴

ワキガの典型的な臭いは以下の通りです。

・ツンとした酸っぱさを感じる刺激臭
・生乾きのぞうきんのカビっぽい臭い
・カレーの香辛料、クミンのようなスパイス臭
・黒鉛、鉄、鉛筆の芯のような臭い

これらの臭いを嗅ぎとれたのであればワキガである可能性は高いと言えるでしょう。ただし、これらの匂いが混じり合うことで「その人独特のワキガ臭」になります。臭いの強さもそれぞれで、元からの体臭も加わりますので「典型的な臭いがしないから、ワキガではない」とは言いきれないのが、ワキガの厄介なところです。

ワキガの臭いの原因

ワキガの原因は遺伝です

ワキガの原因を知るうえでの大前提は、ワキガは「病気」ではなく遺伝による「体質」だということです。

ワキガの臭いの原因はワキの下にあるアポクリン腺※1から分泌される汗にあります。その汗と皮脂を表皮の常在菌が分解・酸化することで特有の臭いを発生させます。つまり、アポクリン腺の大きさ、単位面積当たりの個数、存在する深さ、分泌される内容物が臭いがしない人と異なっているのが「ワキガ体質」というわけです。

この体質は両親から遺伝しやすい性質を持っています。両親から受け継がれた「体質」が成長とともに表面化した状態が「ワキガ」であって、ウイルスにかかったり、生活習慣が原因で引き起こされる「病気」ではないことを理解しておきましょう。ワキガだからといって体調が悪くなったり、人にうつしたりすることはありません。

また「汗っかき=ワキガ」と考えてしまいがちですが、多汗症とワキガはまったくの別の症状です。体を動かしたり、周囲が暑いときにかく汗は無臭。エクリン汗腺から分泌される水とナトリウムを主成分とする汗なので、アポクリン腺から分泌される汗とは根本的に異なるものです。

※1 アポクリン腺

出典元:National Library of Medicine Histology, Apocrine Gland

ワキガの匂いに本人が気づかないのはなぜ?

人は臭いに対して「敏感であり、鈍感である」という相反する感覚を持っています。

たとえば、友達の家をはじめて訪ねたとき、玄関で「自分の家とは違う臭いがする」と感じたとしても、30分もしないうちに意識から消えてしまうという経験は、誰にでもあると思います。それと同じことがワキガを発症している人の身に起きていると考えてください。人は、同じ臭いを嗅ぎ続けると順応してしまい、その臭いを感じにくくなってしまうのです。

その傾向はワキガ体質をもつ家族と暮らしている場合には特に顕著です。自宅でワキガの臭いに順応してしまっているので、自分の臭いに気づくのが難しいのです。もっと言えば、ワキガという概念すら持たないために、その臭いがワキガであることに気づけないこともあります。本人が気づくことができないのは、むしろ自然なことだと言ってもいいでしょう。

自分のワキガはどんな匂い? ティッシュを使ったセルフチェック

ワキガの臭いを自分で確かめるのに、手軽にできる方法が「ティッシュやガーゼを用いたテスト」です。自身のワキを直接嗅ぐのは難しいものですが、この方法なら鼻を近づけることなく確認できます。ワキの臭いが気になる場合にはまず試してみましょう。

セルフチェックのやり方

ワキに折り畳んだティッシュまたはガーゼを直接はさんで、5分ほど待ちます。そのあとで鼻に近づけて臭いをチェックします。そこで先に述べたような「ツンとした酸っぱさを感じる刺激臭、生乾きのぞうきんのカビっぽい臭い、カレーの香辛料クミンのようなスパイス臭、黒鉛・鉄・鉛筆の芯のような臭い」が感じられたら、ワキガの可能性は高いと判断できます。

匂いレベルの評価基準

病院やクリニックで用いられる一般的な基準は5段階です。

レベル1:ほとんど臭いを感じない
鼻を近づけてもほとんど臭いを感じないのであれば、ワキガの可能性は限りなく低いと言えます。他人が気づくのは困難なレベルですので、もし自分だけが気になるようでしたら「自臭症※2」の疑いがあります。

※2 自臭症

出典元:Sniffing out olfactory reference syndrome

レベル2:すこし臭う(ごく軽度のワキガ)
注意深く嗅いで、すこし臭いを感じる程度。体臭として許容できると考えていいでしょう。

レベル3:ガーゼに鼻を近づけると臭う(軽度のワキガ)
ティッシュやガーゼから、ワキガの臭いが明らかに感じられる状態。病院やクリニックでは軽度のワキガと診断を受けます。

レベル4:ガーゼを鼻に近づけなくても臭う(中度のワキガ)
鼻を近づけなくても臭うようであれば中度の症状です。一般的に医療機関での「手術」の保険が適用されるライン。

レベル5:手に持つだけで臭う(重度のワキガ)
手に持っただけで明らかに臭う状態。臭いをゼロに近づけるには、大掛かりな治療が必要な状態です。

セルフテストの注意点

ティッシュやガーゼは無臭のものを選び、テスト前には香料を含んだハンドソープでの手洗いはしないなど、なるべく判別しやすい状態でおこなうことが大切です。入浴の後では臭いが落ちてしまって判別がしにくいため、1日過ごしたあとなど、臭いが気になるタイミングで実施しましょう。

レベル別臭いの特徴

それぞれの症状のレベルを、日常生活に置き換えると以下のような特徴が挙げられます。

ごく軽度のワキガ

ほぼワキガ臭は感じられないので、体臭として許容できます。デオドラント製品を活用したり、ワキを清潔に保つなどのセルフケアを怠らなければ、他人に気づかれることはまずありません。

軽度のワキガ

日常生活に大きな支障はありません。ただ、緊張による汗をかいたときや、運動後のロッカー、デオドラントの効果が薄れる夕方から夜の時間帯には周りの人が気づくことがあります。

中度のワキガ

セルフケアで臭いを完全に抑えるのは難しい状態です。エレベーターや車などの密室空間や、隣どうしのデスク、真横に立つとワキガの臭いを認識できます。

重度のワキガ

離れていても明らかにワキガだと認識される状態ですので、カウンター越しのコミュニケーションや、廊下でのすれ違いざまに周りの人が気づいてしまいます。

ワキガは自分で治せる?臭いを軽減させる対策

自力でワキガを「治す」方法はありません。それは遺伝で受け継いだ「体質」を変えることはできないからです。

では、自分でできることは何もないのか。というと、それは違います。生活習慣の見直しで「臭いを減らせる」ことがわかっているのです。大切なポイントは2つ。「アポクリン腺の分泌を緩やかにすること」と「ワキを清潔に保ち、雑菌の繁殖を抑えること」です。

ワキガ症状を自覚した人がまず試すべきセルフケアを次にまとめました。病院やクリニックでの治療を検討する前に、自分でできるワキガ対策を生活に取り入れましょう。

汗をそのままにしない

汗をかいたまま放っておくと、常在菌が汗の成分を分解して臭いを強めてしまいます。汗をかいたらその都度デオドラントシートで拭き取ったり、寝汗をかいた朝や運動後にはシャワーを浴びるなど、こまめに汗を除去して清潔な環境を保ちましょう。

ワキ毛の処理をする

ワキ毛は雑菌の温床となるケースも多いので、ワキ毛を処理することで清潔を保ちやすくなります。通気性が良くなり、ムレが少なくなるのもメリット。デオドラントシートでの拭き取りも容易になります。

デオドラント商品を使う

殺菌・消臭作用のあるデオドラント製品は臭いを抑える助けになります。シャワーで汗を洗い流した後にクリームやスプレーを使い、出先では、ロールオンやシートを使うなど、生活の中でうまく使い分けましょう。

注意点としては、すでに汗をかいた状態で制汗剤を使用したり、汗を拭き取らずに消臭スプレーを使ってもあまり効果的ではないことです。まずは表皮を清潔にしてから使うことが第一と心得ましょう。

バランスのいい食事をとる

アポクリン腺の汗は脂質やタンパク質を含みます。分泌量を減らすためにも肉類や揚げ物、スナック菓子などの脂っこい食事や、動物性タンパク質の摂取はなるべく控えましょう。魚介類や、野菜を中心とした和食がおすすめです。

また、アポクリン腺の汗に直接の関係はありませんが、ニンニクやニラ、ネギなどの香味野菜には体臭そのものを強くする作用がありますので要注意です。

ストレスをためない

アポクリン腺にはストレスを感じると活性化する性質があります。緊張状態の汗が臭うのはこの性質のためです。睡眠をしっかりとる、定期的に運動する、趣味の時間を作るなど、ストレスを溜め込まない生活を送ることはアポクリン腺の分泌を減らす助けになるでしょう。

汗をかく習慣をつける

運動や入浴で汗をかくことは、毛穴に詰まった古い皮脂や老廃物の排出を促します。常在菌が分解する「臭いの元」を減らすことに繋がりますので、臭い軽減に有効な習慣と言えるでしょう。適度な運動や、湯船にゆっくり浸かる入浴にはストレス発散の効果もありますので積極的に取り入れたい習慣です。

飲酒・喫煙を控える

アルコールやニコチンは汗腺を刺激します。アポクリン腺の分泌を増やす恐れがありますので、過度な飲酒・喫煙は控えましょう。加えて、アルコールやニコチンはその成分自体に強い臭気を含んでいます。ワキガとは別に体臭を強めてしまうことがあるので要注意です。

ワキガかどうかは匂いだけで判断できない

ワキガの臭いは十人十色。人それぞれの体臭も関係してきますので、典型的な臭いに当てはまらない場合もあります。そもそも体臭がない人などいませんし、程度の差こそあれワキの臭いは、あるのが普通なのです。

次に、ワキガ体質の方が持つ「特有の特徴」をチェックリストにまとめました。どの程度ワキガの可能性があるかを探る目安として役立ててください。該当する項目が多ければ、それだけワキガの可能性が高まります。

特に注目したいのは「両親またはどちらかがワキガ」「耳垢が湿っている」の2つです。両方に当てはまる場合には、ワキガ体質の遺伝が強く疑われます。

両親またはどちらかがワキガ

両親の片方がワキガの場合で50%、両親ともワキガであれば80%の割合でワキガ体質が子どもに遺伝すると言われています。

日本では1割程度と言われるワキガ体質も、欧米では当たり前といっていいほど持っています。そのため、欧米の方を血縁者に持っていることも手がかりになるでしょう。

耳垢が湿っている

ほとんどのワキガ体質の方は耳垢が湿っています。その理由は、耳の中にあるアポクリン腺※3。分泌が多いために耳垢が湿ると考えられているのです。ワキガ体質が強い方では、茶色っぽい、キャラメル状の耳垢になります。

※3 耳の中にあるアポクリン腺

出典元:Human ceruminous gland: ultrastructure and histochemical analysis of antimicrobial and cytoskeletal components

洋服のワキ部分が黄ばむ

洋服のワキ部分の黄ばみは、アポクリン腺の汗に含まれる「リポフスチン」という色素成分が原因です。アポクリン線からの分泌が活発であるほど強く色素が付着するのでワキ部分が黄ばみます。場合によっては黄土色になることも。ちなみに、リポフスチンは普通の汗には含まれません。

ワキ毛が濃い

アポクリン腺は毛根の組織につながっています。そのため、ワキ毛が濃いことは毛根の数が多いことと同義なので、アポクリン腺の数にも関係すると考えられています。とはいえ、ワキ毛はワキガの直接的な原因ではありません。あくまで目安という位置付けに留めておくべきだと私は考えます。

ワキ毛に白い粉がつく

ワキ毛に付着している白い粉は、アポクリン腺の分泌物が結晶化したものです。汗が蒸発したときに、汗の成分が結晶化してワキ毛に残ります。ただ、制汗剤や消臭剤も種類によっては白い粉がつくことがありますので、見間違いには注意です。いずれも使用していない状態で付着しているのであれば、ワキガ体質である可能性は高いと判断できます。

臭いが気になったら病院での治療がおすすめ

綾部 誠

まずは知ることが第一歩。ワキガに関する正しい知識を持つことが、自己診断の精度を高め、それぞれの症状に合った治療選びの助けになります。また、自分の状況を知ることで安心を得られることも大きなメリットです。

それでもワキガの悩みは尽きることがないでしょう。ワキガは「臭い」の症状ですから、自分の嗅覚しか頼りがないのでは不安になるのも当然です。自分で判断できない。症状が改善しない。ベストな治療法がわからないーーそんなときには迷わず専門医に相談してください。「餅は餅屋」という言葉が示す通り、「ワキガの悩みはワキガの専門医」にお任せいただくのが最善だと断言します。

たとえば私のクリニックでは、今までに2,500を超えるワキガの悩みを解決へと導いてきました。その全ての方々のカウンセリングと治療を院長である私が担当することで、今も多くの方に信頼していただき安心して治療を受けていただいています。

多くのワキガ症状と向き合って、絶えず積み重ねてきた専門医の治療の経験は、必ずやあなたの悩みを解決する助けになるはずです。

関連記事

カウンセリング予約
お問い合わせ

0120-072-557

電話受付9:30~19:00

診療時間・休診日

  • 診療時間:10:00~18:00(完全予約制)
  • 電話受付:9:30~19:00

アクセス

所在地

〒812-0013
福岡県福岡市博多区博多駅東2丁目5−37
博多ニッコービル8階

※当院は、プライバシー保護の観点から看板を出しておりません。

アクセス

  • JR博多駅 筑紫口より徒歩2分
  • 地下鉄 博多駅より2分
  • 天神、福岡空港駅から地下鉄で10分

LINE公式アカウント

ご登録するには、「友だち追加」をタップしてください。
予約枠の空き状況やあやべクリニックのキャンペーン等最新情報をLINEにて配信いたします
登録方法がわからない場合は、ご来院の際に受付スタッフにご相談ください。